先ずは今回の記事に関連して、宅建士試験対策の問題です。
宅建試験対策として、今回の内容をもとに本試験レベルの問題を作成しました。
解答と解説もご用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。
貸主Aは、賃貸マンションの一室のリフォームをリフォーム業者Bに依頼した。
しかし、工事中にBの作業員のミスで配管が詰まり、階下の居住者Cの部屋に水漏れが発生した。
Cは、「Aが手配した業者Bのミスで損害を受けたのだから、Aも賠償責任を負うべきだ」として、Aに対して損害賠償請求訴訟を提起した。
この場合、AがCに対して賠償責任を負うかどうかについて、次のうち正しいものを選びなさい。
- Aはリフォーム業者Bを手配した責任があるため、Cに対して賠償責任を負う。
- Aはリフォーム業者Bに賠償責任を負わせるべきであり、Cに対して直接の責任は負わない。
- Cが受けた損害については、リフォーム業者Bが負うべきであり、Aは賠償責任を負わない。
- Aはリフォーム業者Bに請負契約を依頼しているため、Cに対して責任を負う可能性がある。
正解:3
解説
本件は、リフォーム業者のミスによる水漏れ事故であるため、基本的にはリフォーム業者Bが責任を負うべきであり、貸主Aには直接的な責任は発生しないと考えられます。
後程ご紹介する今回の判例を基にすると、工事業者が請負契約に基づき独自の責任で行っていた工事のミスについては、発注者である貸主が責任を負うことにはならないとされています。
ただし、異なる状況下では責任が生じるケースもあり得るため、責任範囲の理解とリスク管理の重要性が指摘されています。
正解が4では?
…と思った方に追加で解説をいたします。
選択肢「4」は、「Aはリフォーム業者Bに請負契約を依頼しているため、Cに対して責任を負う可能性がある」という内容です。
この選択肢は、A(貸主)とB(リフォーム業者)の間の請負契約をもって、AがC(階下の居住者)に責任を負う可能性を示唆しています。
しかし、実際には貸主がリフォーム業者に工事を依頼しているだけでは、貸主が第三者に対して責任を負う理由とはなりません。
本件の判例において、裁判所は「工事を行うリフォーム業者は貸主の賃借人に対する債務の履行を補助する者ではない」と判断しました。
そのため、工事中の業者のミスにより階下の賃借人Cに損害が発生したとしても、その責任は基本的にリフォーム業者Bにあり、貸主Aには直接的な賠償責任がないとされました。
したがって、このケースでは「貸主は責任を負わない」というのが結論です。
「貸主の責任が問われる可能性があるケース」について
ただし、このあとの本記事でもご紹介しますが、「工事を行った部屋そのものの賃借人に被害が生じた場合」には、貸主が責任を問われる可能性がある点に注意が必要です。
この場合、リフォーム工事が行われた部屋に居住する賃借人との契約上、貸主が居住環境の提供義務を負っているため、リフォーム業者は貸主の「履行補助者」とみなされることがあり、貸主の責任が認められる場合があります。
「工事を行った部屋そのものの賃借人に被害が生じた場合」とは?
リフォームや修繕工事を行った部屋に住む賃借人が、その工事によって直接的な損害を被ったケースを指します。具体的には、以下のような例が考えられます。
- 部屋の設備や家具への被害
工事中に作業員が誤って水を漏らしたり、物を落としたりして、賃借人の家具や設備に損傷が発生した場合。
例えば、塗装工事中に塗料が家具に付着して汚れたり、水漏れが賃借人の電化製品を壊したりするケースです。 - 生活の制限
工事中の騒音や振動、異臭などによって賃借人が通常の生活を送れなくなり、日常生活に支障が出た場合。
例えば、内装工事の音で睡眠や在宅勤務に支障が出たり、リフォームの異臭で体調を崩したりする場合です。 - 賃貸契約上の居住環境の不備
工事の失敗により、例えば配管が損傷して水道が使えなくなったり、電気工事で一時的に停電したりして、賃借人がその部屋の基本的な設備を利用できなくなった場合です。
このような場合、賃貸借契約に基づき貸主は賃借人に適切な居住環境を提供する義務があるため、リフォーム業者が工事を行っている間もその責任が問われることがあり、賃借人から「居住環境を保証できていない」として責任追及される可能性があります。
したがって、当該問題では「工事を行った部屋そのものの賃借人に被害が生じた」という問題ではなく、階下C(工事を行った部屋の賃借人ではない)が貸主に対して「賠償責任を負うべきだ」と聞かれている問題なので、事例のように、階下の賃借人Cに被害が及んだ場合には、リフォーム業者に対する損害賠償請求が認められ、貸主の責任は問われないと考えるのが妥当です。
こんにちは!
RISO 店長ハチです。
貸主が手配したリフォーム工事で水漏れトラブルが発生。
さて、貸主は賠償責任を負うのか?
2024年もいよいよ年末、寒さと共にやってくるのが「漏水トラブル」!
リフォーム工事の不手際で起きる水漏れなんて、「それって貸主の責任?」と気になる方も多いでしょう。
今回は、東京地方裁判所での事例をベースに、現状の法的責任についてお話しします…
が、安心してください。
結論から言うと、責任は業者さんに集中です!(ホッとしました?)
今回の記事を読むことで、以下のポイントが理解できるようになります。
1. 過去の判例と貸主の責任範囲
2. 貸主の責任が問われるケースの理解
3. 保険の重要性と予防策
4. 今後における賃貸経営の心構え
1. 過去の判例と貸主の責任範囲
事件のあらまし
(2023年の話ですが、いまだに色あせない…)
さて、2023年のある事件、10階のお部屋のリフォーム中に工事業者が水道管を詰まらせて水漏れ発生!
階下の9階にも浸水してしまい、9階の入居者さんがオーナーにも責任があると訴えた事例です。
裁判所はどう判断したかというと…
貸主は「無罪放免」でした。
リフォーム業者がやらかしたことで、オーナーまで責任を取らされるのは違う!
…という結論です。
2. 貸主の責任が問われるケースの理解
貸主に責任がないってホント?
これを聞いて「よかった、オーナーは関係ない!」と安心したあなた。
少し待ってください!
この事例では確かに「貸主の責任はない」とされたものの、もし工事した部屋そのものの賃借人に被害があれば、責任が出る可能性も。
賃貸経営の世界は常に変動しており、判例がすべてではないのです。
3. 保険の重要性と予防策
じゃあ今後はどうする?
今後に備えるために、オーナーの皆さんには「保険」への加入を強くお勧めします!
施設賠償責任保険はもちろん、万が一の「やらかし」をカバーできる保険で備えるのが安心です。
これで
…という万が一の時も、少しは笑って話せるかもしれません。
4. 今後における賃貸経営の心構え
笑いも取って終わりに
こんな風に、リフォーム業者さんには気をつけてもらいながら、オーナーとしてもしっかり守りを固めるようにしましょう!
最後に、どうしても
…というときは、私のようにユーモアを武器にし、笑いで乗り切ってみてはいかがでしょうか?
この判例から、貸主はリフォーム工事中に発生する損害について、責任の範囲がどこまで及ぶかをしっかりと理解し、適切にリスクを管理する必要があります。
特に、入居者に直接的な被害が及ぶ場合には責任を負う可能性があるため、事前に保険に加入することで万が一の事態に備えることが大切です。
今後も引き続き、リスク管理をしっかり行い、安心して賃貸経営を行いましょう!