いきなりですが、宅建問題です。
築45年の老朽化した賃貸アパートに関して、賃貸人が賃借人に対して契約解約の申し入れを行いました。アパートの耐震診断では「倒壊の可能性が高い」との結果が出ており、耐震補強工事には1,800万円の費用がかかると見積もられています。賃貸人は立退料として100万円(賃料の20か月分相当額)を提示し、正当事由として契約解約が認められることを主張しました。
この場合、正当事由の成立に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選んでください。
- 賃貸人が老朽化と耐震性不足を理由に解約を申し入れたため、立退料の提供がなくても正当事由が認められる。
- 建物の老朽化の程度と耐震診断結果が重要な要素とされるが、立退料の提供も正当事由の補完として必要とされる場合が多い。
- 倒壊の危険性が認められているため、賃貸人が提示する立退料は、賃借人の居住年数や賃料の金額に関係なく一律100万円とされる。
- 借地借家法には立退料の金額基準が明記されており、築年数が45年以上の物件には必ず賃料の20か月分が適用される。
正解:2
解説
老朽化した建物に対する解約申入れでは、単に老朽化や倒壊の危険性を理由にするだけでは正当事由は認められず、立退料の提供による補完が必要とされる場合が多い。
選択肢2が最も適切です。
こんにちは!
RISO 店長ハチです。
近年、賃貸物件の老朽化に伴い、賃貸人が居住者に対して契約更新の拒絶または解約を申し入れる事例が増えています。
しかし、こうした申し入れが法的に認められるには「正当事由」が必要です(借地借家法第28条)。
この記事では、築45年以上の物件に対する立退料100万円の提供で正当事由が認められた裁判例を元に、2024年10月現在の法的観点から解説します。
今回の記事を読むことで、以下のポイントが理解できるようになります。
- 賃貸契約の解約や更新拒絶に必要な正当事由
- 立退料の重要性と金額の決定基準
- 老朽化した物件での正当事由が認められるケースの具体例
- 賃貸人としての対応方法
1.賃貸契約の解約や更新拒絶に必要な正当事由
老朽化と立退料の関係性
賃貸物件が著しく老朽化し、大地震で倒壊する危険性がある場合、賃貸人は契約更新の拒絶や解約の申入れを行うことが可能です。
しかし、この場合も単に老朽化を理由にしただけでは正当事由は認められません。
法律上、賃貸人には「立退料」の提供が求められ、これにより正当事由が補完されるケースが多いです。
2.立退料の重要性と金額の決定基準
裁判例の具体的な内容
築45年以上経過し、耐震診断の結果「倒壊の可能性が高い」と判定されたアパートで、賃貸人が解約の申入れを行い、賃借人に立退料100万円を提供しました。
この事案では以下のような状況が考慮されました。
- アパートの築年数が45年以上であり、耐震補強工事費用として約1,800万円が見積もられた。
- 入居者が10年以上の居住歴があるため、賃貸人側は立退料100万円を提示しましたが、入居者は当初1,000万円を要求し、その後200~350万円に下げて交渉しました。
- 裁判所は、耐震診断の結果や建物の老朽化が顕著であることから、100万円の立退料が妥当と判断しました。これは、賃料の20か月分に相当する額です。
3.老朽化した物件での正当事由が認められるケースの具体例
裁判所の判断ポイント
裁判所は、建物の状態や固定資産税評価額、賃料、交渉経過などを総合的に考慮し、「賃料の20か月分」という金額が正当事由の補完として相応しいと判断しました。
このように、建物の老朽化が著しい場合でも、退去を拒む借主に対しては立退料が必要となることが多いです。
4.賃貸人としての対応方法
法律動向とポイント
2024年現在も、借地借家法第28条の要件を満たすには、賃貸人が立退料の支払いを通じて正当事由を補完するケースが一般的です。
また、立退料の金額は賃料、建物の状態、賃借人の居住年数、耐震診断の結果等の多岐にわたる要素を基に決定されます。
築年数が長く老朽化が顕著な物件であっても、賃借人の権利が守られるように、立退料を提供しなければならない場合が多いため、賃貸人としては、解約の申入れをする際には法的に適切な手続きを踏むことが重要です。
また、契約解消の必要性や立退料の妥当性が明確でない場合は、専門家に相談し、裁判例を参考に対応を検討することが推奨されます。
- 老朽化に伴う建替えや解約の申入れにおいては、「立退料」が正当事由の補完としての重要な要素となるため、事前に賃料の20か月分相当額などを目安に検討すると良いでしょう。
- 耐震性や修繕費用、交渉経緯といった具体的な要素が判断材料となり、適切な立退料の設定と法的手続きを踏むことが重要です。
老朽化物件の立退き対応には、適正な立退料と法的準備が鍵です。