宅建業法

Vol.104 消費者契約法と宅建業法はどちらが優先されるか?!

先ずは今回の記事に関連して、宅建士試験対策の問題です。

今回の内容をもとに本試験レベルの問題を作成しました。

解答と解説もご用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。

宅建業者である売主が、一般消費者を買主として建売住宅の売買契約を締結した。契約書には次の特約が定められている。

  1. 違約金特約
    契約違反により契約解除がなされた場合、売買代金の20%に相当する金額を違約金として請求する。
  2. 遅延損害金特約
    売買代金の支払いが遅延した場合、未払金額に対して年14.6%の割合で計算される遅延損害金を請求する。

上記の【遅延損害金特約】について、宅建業法第38条第2項の趣旨に照らすと、以下のうち最も適切な説明はどれか。

  • A. 支払い遅延による損害賠償は、違約金と合算して計算されるため、必ず上限規制に抵触し無効となる。
  • B. 遅延損害金は、契約解除に伴う違約金とは性質が異なるため原則有効とされるが、実際の訴訟では違約金の一部とみなされ、上限規制の対象となる可能性がある。
  • C. 支払い遅延の場合の損害賠償として定められた遅延損害金は、宅建業法の規制の対象外となるため、いかなる場合も有効である。
  • D. 遅延損害金特約は、事前に消費者に不利益となることが明示されていなければ有効と認められる。

 

 

 

 

 

 

 

解答と開設

正解:B

解説

宅建業法第38条第2項は、宅建業者が自己の売買契約において定める違約金等の合算額が上限(売買代金の20%=10分の2)を超えないよう規制しています。

ただし、遅延損害金は、契約解除に伴う違約金とは性質が異なり、原則として個別に定められた場合は有効とされます。

しかし、実務上・訴訟上は、遅延損害金が実質的に違約金と一体とみなされる状況が生じる可能性があり、その場合には上限規制との整合性が問題となる可能性もあるため、選択肢Bが最も適切です。

こんにちは!
RISO 店長ハチです。

今回は、前回の「消費者契約法」に関連して「消費者契約法と宅建業法はどちらが優先されるか?!」という興味深いテーマですが、実はその裏側に「違約金」や「遅延損害金」という、まるで漫才の「ボケ」と「ツッコミ」が交錯するような、絶妙なタイミングの法律の論点が隠れています。

不動産取引の現場では、宅建業者としての私たちが売主、そして一般の皆さんが買主となる建売住宅の契約が、どれだけ複雑な法律の網の目に絡まるか、経験者なら一度は思い当たるはず。

宅建業法が定めるルールと、消費者契約法が設けた保護規定が、どちらの拳が先に当たるのか…

その答えは、まるで夫婦のあうんの呼吸のように絶妙なバランスの上に成り立っています。

この記事では、具体的な事例や判例をもとに、契約違反時に発生する違約金と遅延損害金の設定が、実際にどのように扱われるのかを解説。

重いテーマを扱いながらも、ユーモアを交えた分かりやすいスタイルで、法律の世界の裏側に迫ります。

法の条文が持つ硬さも、ひとたび私のトークに乗せれば、意外と笑顔に変わるもの。

実際の現場で直面するリアルな問題と、その解決策をお届けします。

それでは、一緒に楽しみながら学んでいきましょう!

今回の記事を読むことで、以下のポイントが理解できるようになります。

  1.  法律の優先適用関係
  2.  違約金と遅延損害金の取り扱い
  3.  実際の判例
  4.  難解な法律論点をわかりやすく解説

1. 法律の優先適用関係

まずは、こんなシチュエーションを想像してください。

宅建業者である私たちが売主、あなたが買主となる建売住宅の契約。

契約書には「契約違反の場合、売買代金の20%を違約金として請求!」という定めがある上に、もし売買代金の支払いが遅れたら、年14.6%の遅延損害金も追加請求…

店長ハチ
店長ハチ
ダブルパンチですね!

1:遅延損害金の定めは宅建業法第38条第2項に抵触するのか?

結論

遅延損害金の定め自体は無効とはならない!

つまり、契約上に「売買代金の支払いが遅れた場合、年14.6%の遅延損害金を請求する」という条項は、宅建業法第38条第2項の規制に直接引っかからず、有効な取り決めと解されます。

ただし、万が一この話が法廷というステージに持ち込まれた場合、裁判所が

裁判官
裁判官
あれ?この遅延損害金は違約金の中に含まれているんじゃないか?

…と判断する可能性もゼロではありません。

例えるなら…

夫の浮気が妻にバレて、夫が妻にGUCCIのバックをプレゼントして和解を求めたが、許してもらえず離婚して慰謝料を請求されたが裁判官は

裁判官
裁判官
この流れならGUCCIのバックは慰謝料から差し引いても良いのではないか?!

…と判断するようなものです。

2:消費者契約法第9条第1号と宅建業法第38条、どちらが優先適用されるのか?

結論

売主が宅建業者で、買主が宅建業者以外の一般消費者の場合、宅建業法第38条の規定が優先適用されます!

店長ハチ
店長ハチ
ここが今回のオチ。

2. 違約金と遅延損害金の取り扱い

消費者契約法では、

違約金や損害賠償額の合計が、解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害額を超える部分は無効

…とされていますが、宅建業者はその性質上、他の法律で特別な規制を受けています。

消費者契約法第11条第2項により、宅建業者が売主の場合は、たとえ消費者契約の形態であっても、特別規制である宅建業法第38条が優先されるのです。

3. 実際の判例

実際の判例

福岡高裁(平成20年3月28日判決)でも、新築分譲マンションの違約金規定について、宅建業法の規定が優先されると判断されました。

裁判所は、そのケースで

裁判官
裁判官
解除後1か月も経たないうちに再販売されるという事情もある

…としながらも、宅建業法の枠組みで妥当な違約金の範囲を認めたのです。

今後、不動産取引の現場では、法律の適用に関する議論はますます複雑化していくことが予想されます。

まるで、ルールがどんどんアップデートする夫婦ように、次々と新しい論点が登場するかもしれません。

でも、私たち賃貸経営のプロは、契約書の堅苦しい条文も、笑顔に変えて乗り越える覚悟でいます。

4. 難解な法律論点をわかりやすく解説

問題1の回答と解説

結論

  • 遅延損害金の定めは、宅建業法第38条第2項に反して無効とはならない。
    ただし、裁判所での解釈次第で、違約金に含まれるとみなされる可能性もある。

内容の要点

建売住宅の売買契約において、

違約金の条項

契約違反時に売買代金の20%を違約金として請求する定め

遅延損害金の条項

売買代金の支払い遅延時に、未払金に対して年14.6%の割合で計算される遅延損害金を請求する定め

これらが、宅建業法第38条第2項の規定(宅建業者が自己の取引において設定できる損害賠償または違約金の上限規制)に抵触するかどうかが争点となっています。

解説

1.宅建業法第38条の趣旨

  • この条文は、宅建業者が自ら売主となる場合に、契約解除時に請求できる損害賠償や違約金の総額が、売買代金の20%(=代金の10分の2)を超えないように定めています。
    つまり、当該条文は、消費者が不利な条件で過大な損害賠償・違約金を請求されないようにするための保護規定です。

2.違約金と遅延損害金の区分

  • 違約金は、契約違反(例えば、契約解除に至る不履行など)に対してあらかじめ定められた金額です。
  • 遅延損害金は、支払い期日を過ぎた場合に、遅延に対して生じる損害を補填するための金額で、消費者契約法においては、年14.6%の割合が上限として規定されています。

3.遅延損害金の有効性について

  • 遅延損害金の定めは、直接的には契約違反による解除に伴う違約金の規定の対象外となります。つまり、宅建業法第38条が主に「契約解除に伴う損害賠償等の合算額」に関する規制を行っているのに対し、支払い遅延の場合の遅延損害金は、別個に定められたものです。
  • そのため、契約書上で定められた「年14.6%の遅延損害金」については、原則として宅建業法第38条第2項の制限に直接抵触するとはならず、有効と解されます。
  • ただし、 万が一、この条項が実際のトラブルに発展し、裁判の場に持ち込まれた場合、裁判所が「遅延損害金が実質的に違約金の一部とみなされる」などの解釈を下し、全体の請求額が上限を超えていると判断する可能性は否定できません。

問題2の解答と解説

結論

  • 売主が宅建業者の場合、消費者契約法よりも宅建業法の規定が優先される(消費者契約法第11条第2項参照)。

内容の要点

  • 消費者契約法第9条第1号は、消費者契約において、違約金や損害賠償の合計が、契約解除時に事業者に実際に生じる「平均的な損害の額」を超える部分を無効とする規定です。
  • 一方、宅建業法第38条は、宅建業者が売主となる取引において、違約金や損害賠償の合算額の上限を定めています。

解説

1.消費者契約法と宅建業法の関係

  • 消費者契約法は、消費者保護の観点から一般的な取引に適用され、事業者と消費者間の契約条件の不均衡を是正するための規定が設けられています。
  • しかし、宅建業者の場合、すでに宅建業法という特別法によって取引の内容や条件について規制が行われています。

2.優先適用の原則

  • 消費者契約法第11条第2項には、民法や商法以外の他の法律に別段の定めがある場合、その定めに従うという規定があります。
  • 本件の場合、売主が宅建業者であるため、宅建業法による特別な規制(具体的には第38条の上限規定)が適用されることになります。
  • つまり、消費者契約法第9条第1号の「平均的な損害の額を超える部分は無効」とする保護規定は、宅建業者が適用される取引では、宅建業法第38条の規定により上書きされ、優先的に適用されるということになります。

3.実際の判例の背景

  • 福岡高裁の判決(平成20年3月28日)でも、新築分譲マンションの取引において、宅建業者が設定した違約金規定について、消費者契約法ではなく宅建業法の規定が優先されると判断されました。
  • この判決は、売主が宅建業者の場合、特別法である宅建業法のルールに基づき、違約金や損害賠償の請求額が定められるべきだという考え方を示しています。

次回は、「賃貸借契約の更新と再契約」 について解説します!

更新料の法的根拠や、契約満了時に再契約となるケースの違いなど、知っておくべきポイントを詳しく解説予定ですので、お楽しみに!