先ずは今回の記事に関連した、宅建試験対策の問題です。 宅建試験対策として、今回の内容をもとに本試験レベルの問題を作成しました。 解答と解説もご用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。
賃貸借契約に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
A. 賃貸借契約が契約期間満了を迎えた場合、借主が退去の意思を示さなければ、常に法定更新が適用される。
B. 定期借家契約の場合、契約期間満了後は法定更新されるため、借主は引き続き居住できる。
C. 賃貸借契約の合意更新では、貸主と借主の合意がなければ契約は終了する。
D. 貸主が更新を拒否する場合、必ず事前に借主へ6ヵ月以上の予告をする義務がある。
【正解】C
【解説】
賃貸借契約の 合意更新 は、貸主と借主が双方の合意によって契約を継続するものです。
そのため、どちらかが合意しなければ契約は終了します。
- Aは誤り。
法定更新(自動更新)は、貸主が更新を拒絶しない場合にのみ適用される。 - Bは誤り。
定期借家契約 では、契約期間満了後に自動的に更新されることはなく、借主は引き続き居住できない。 - Dは誤り。
更新拒絶の通知義務は 借地借家法 に定められているが、すべてのケースに適用されるわけではない。
こんにちは!
RISO店長ハチです。
前回は 「消費者契約法と宅建業法はどちらが優先されるか?!」 について解説しました。
今回は、「賃貸借契約の更新と再契約」 について詳しく解説していきます。
…と疑問を持つ方も多いかと思います。
契約の種類によって手続きが異なり、更新と再契約には大きな違いがあるため、事前にしっかり理解しておくことが重要です。
今回の記事を読むことで、以下のポイントが理解できるようになります。
- 賃貸借契約の更新と再契約の違い
- 契約更新の種類と特徴
- 再契約とは何か?
- 更新料の法的根拠
- 貸主・借主が注意すべきポイント
- この記事で学べること
1. 賃貸借契約の更新と再契約の違い
賃貸借契約の契約期間が満了すると、次の2つのいずれかの手続きが発生します。
簡単に言うと、契約更新は現状維持、再契約は契約を結び直す という違いがあります。
2. 契約更新の種類と特徴
賃貸借契約の更新には 「自動更新(法定更新)」 と 「合意更新」 の2種類があります。
① 自動更新(法定更新)
借地借家法の規定により、契約満了時に貸主・借主のどちらからも更新手続きが行われない場合、自動的に契約が継続する仕組み です。
この場合、契約の期間が「定めのない契約」となり、借主はいつでも解約申請が可能 となります。
- 貸主側は正当な理由がない限り契約を終了できない
- 借主は自由に退去できる(一般的に解約予告は1~2ヵ月前)
- 更新料が発生しないことが多い
…というケースは、この法定更新が適用されている可能性があります。
② 合意更新
契約書に「契約更新には貸主・借主の合意が必要」と記載がある場合、貸主・借主双方の合意がなければ更新できません。
この場合、更新時に更新料を支払うケースが多い です。
- 契約書に「更新時に更新料○ヶ月分を支払う」と記載がある場合、支払う義務が発生する
- 貸主・借主の双方が合意しない場合、契約満了となる
- 更新時に賃料や契約内容の変更が可能
更新料の支払いについては消費者契約法の適用が問題になるケースもあるため、後述する「更新料の法的根拠」で詳しく解説します。
3. 再契約とは何か?
再契約とは、「契約満了後に新たに契約を結び直すこと」です。
更新とは異なり、新規契約となるため、契約条件の変更が可能です。
再契約が行われるケース
定期借家契約の場合
定期借家契約(契約期間が定められており、満了後に契約が自動更新されない契約)では、契約を継続する場合は再契約となります。
貸主が契約内容を変更したい場合
家賃の改定や契約条件を見直したい場合、貸主が「再契約」として対応することがあります。
借主が再契約を希望した場合
例えば、短期契約を希望する場合など、再契約を選択するケースもあります。
4. 更新料の法的根拠
…という疑問を持つ人も多いかもしれません。
更新料の有効性については 最高裁判所の判決(平成23年7月15日) で次のように示されています。
✅ 更新料の支払いが契約時に明示されていれば有効
✅ 更新料の額が社会通念上妥当な範囲内であれば無効とならない
✅ 貸主の利益だけが過度に優先される場合は消費者契約法違反となる可能性がある
つまり、契約時に「更新料を支払う」と明確に合意している場合、更新料は有効 ですが、金額が高額すぎると無効となる可能性があります。
- 1年契約:家賃の0.5~1ヶ月分
- 2年契約:家賃の1ヶ月分
更新料を請求された場合、契約書に明記されているかどうか、金額が適正な範囲かを確認することが重要です。
5. 貸主・借主が注意すべきポイント
貸主が注意すべきこと
✅ 契約更新や再契約の条件を明確にしておく
✅ 更新料を設定する場合、合理的な金額にする
✅ 再契約の場合、契約条件の変更が妥当か慎重に検討する
借主が注意すべきこと
✅ 契約書を確認し、更新料や契約満了時の手続きについて把握する
✅ 更新時に賃料や契約内容が変わる可能性を理解しておく
✅ 契約更新ができない可能性があるため、満了前に確認する
6. この記事で学べること
賃貸借契約の更新と再契約には大きな違いがあり、どちらが適用されるかによって借主・貸主の権利や義務が変わります。
- 法定更新(自動更新):契約は継続、貸主は解約できないケースが多い
- 合意更新:貸主・借主の合意が必要、更新料が発生することがある
- 再契約:契約満了後、新しい契約として締結する(条件変更の可能性あり)
- 更新料は契約時に明示され、合理的な範囲であれば有効
契約更新と再契約の違いを理解し、更新料の適正性や契約満了時の対応を把握することで、貸主・借主双方が納得のいく契約を結ぶことができます。
契約満了時に慌てないためにも、契約時に更新や再契約の条件をしっかり確認し、トラブルのないスムーズな契約継続を目指しましょう!
次回は、「賃貸借契約における賃料増額・減額請求のルール」 について詳しく解説します!
家賃の値上げ・値下げはどのような条件で行われるのか、法律の視点から解説するので、お楽しみに!